第1章

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考えないようにしていることを、引きずり出さないで欲しい。 心を揺らしたくない。 追ったら、そのまま置いていかれそうで…。 こわい。 「仕事に決まってるでしょ!」 「そうだね。」 「カズマこそ、彼女作らないの?」 「今は早く一人前になりたいから。」 「そうなんだ。 …そろそろ帰るね。」 「送るよ。」 「いらないよ。 通りまだ明るいから。」 「でも。」 カズマを無視して、会計を済ませて店を出る。 「ハナちゃん!」 上着を羽織りながら、慌てて追いかけてきた。 「ん?」 「買い出しあるから、そこまで一緒に行く。」 「そうなの?」 並んで歩く。 年下なんて言っても、カズマの方が背はずっと高い。 それにさっき話していたように、商店街は知り合いだらけらしくて、最近は私まで声をかけてもらうようになった。 「まだ寒いね~。 早く温かくならないかなぁ。」 「ハナちゃん、寒いの嫌い?」 「うん。 カズマは?」 「嫌いじゃないよ。」 「そっか。」 いつもニコニコしていて、カズマには嫌いなものなんてないのかもしれない。 「スーパーあっちでしょ! 私こっちだから。」 別れ道に差し掛かったときに、そう言うとカズマはなにか言おうと口を開くけれど、遠慮なく遮る。 「気を付けてね。 またね。」 ヒラヒラっと手を降って、背を向ける。 「は、ハナちゃん、また明日!」 後ろから声が聞こえた。 振り返らずに、片手を上げた。 カズマも翔太も優しくて、つい甘えたくなるけれど、そんなことをしてしまったら、心地いい今の関係を壊してしまう。 甘えすぎないように、近づきすぎて迷惑をかけないように、すごくすごく気をつけなきゃ。 カズマも翔太も好きだけど、恋愛ではなくて、弟がいたらこんな感じなのかなぁ…。 なんて、そんな感覚だ。 家について、鍵を開ける。 暗い部屋に、ため息を吐き出した。
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