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駅からは、また少し歩かなければならない。こっちの道は舗装されてるから歩きやすいけど、花はつまらなさそうだ。
とにかくこういう寒い日には霜柱がないといけないらしい。
「花よぅ…どっちみち8時じゃ、霜柱は溶けてるって。」
「そんなことわかんないじゃん。霜柱なめんなよ。」
「いや、なめちゃいないけどさぁ…彼らも結局氷な訳だから、そんな何時間も踏ん張って土持ち上げていられないっしょ。」
「最近の霜柱は、そんな根性もなくなってきてるのか…嘆かわしき事この上ないねぇ。」
「最近の…って。霜柱は昔も今も変わんないでしょ。」
「いや、最近のはダメだよ。生活排水やら工業廃水やらがまじってるから、やわなのよ。踏めばわかる…」
「なんだかすごいねぇ…花ちゃん、それ職業にできそうよ。」
「霜柱博士、みたいな?」
「そうそう、そういうの。」
「ふぅん…いいかもしんない。…なるほど、霜柱博士か…気付かなかったな…」
やばい。花はこのテの冗談を間に受けやすいのだ。クレープに続いて、霜柱にまで気を回さなきゃいけないなんて、そんなのごめんだ。
「いやいや花、あんたね…何真剣に考えてんのよ。霜柱博士なんて、そんな職業ないからね?」「え?」
「え?じゃないわよ。そんな冬にしか仕事がない職業、あるわけないじゃんよ。」
花は、そうかそうよねぇ、とかなんとかつぶやいた。あたしは花の顔を見ながら、少し出てきた太陽の光を顔に受ける。
校門が見えてきた。
花が走り出す。
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