内緒のお店

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内緒のお店

「え? これ? 確かにかわいいけど、ブランド品とかじゃないよ? 値段だってかなり安い物だし。  買ったお店はねェ…ヒ、ミ、ツ。  意地悪で言ってるんじゃなくて、教えちゃいけないの。  友達の友達ヅテで紹介してもらったお店でね、なんでも、無名のデザイナーさん達が共同出資で立ち上げた店だから、下手に評判になると、業界に睨みが効くような有名デザイナーさん達に疎まれて、圧力かけられちゃうから、今はこっそり賛同者を集めて、地盤固めの真っ最中なんだって。  ある程度軌道に乗るまでは活動は秘密だから、お店の場所も何もかも、絶対内緒って念を押されてるの」  あー。そうなんだ。 「あ、でもぉ…お店のこと気になるなら、アタシから友達ヅテに話してあげてもいいよ?」  んー。いい。 「ホントにぃ? 一人くらいなら、多分大丈夫だと思うよ?」  いい。 「そぅ。いいならいいけど。後で『やっぱり…』みたいに言わないでね」  同僚の鞄が、ちょっと見たことのないデザインだったから、軽くどこで買ったのか聞いてみた。  それに返った対応がコレ。  別に、そこまでしてどうしてもって品じゃないし、いずれ世に出るような人達の作品なら、待ってれば世間に出回るんじゃないの?  というか、『そんなこと言わずに。お願い』って、凄くすがってほしそう。  そこまでしてかなって思って、逆に引くなー。 * * *
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