『おにいちゃんのゆんゆんえ』 和田

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 遊んでいる子供たちの年齢はまちまちだった。小学校に上がるか上がらないかという子もいれば、いちばん大人びた女の子は高校生といってもおかしくないくらいに見える(誰も学校には行ってないわけだけど)。  その女の子の名前はリカで、大人びているというか、ほんとは二十歳だ。いちおう刈賀さんの家の子供になっているので、刈賀リカというのが彼女のフルネーム。鏡太郎くんという男の子が、ひとりだけ尻をぺたりと地面につけて遊んでいる。ほかの子に蹴られたりしないか、見ていて不安になる。  全部で十三、四人ほどが遊んでいる。これで島の子供たちの半分くらいは集まっていることになるんだろうか。島の人口がどれくらいなのか、まだ把握しきれていない。名前もいっぺんには覚えられない。  備忘録も兼ねて、ぼくは、もらったノートに日記をつけている。  今日は、五月二十六日。晴れ。  船越さんのところの男の子が、輪から外れ、どこからか空き缶を拾って戻ってきた。缶蹴りが始まるらしい。 「ぶゆうでん、ぶゆうでん、ぶゆうでん・でん・でん!」  ジャンケンの掛け声だということは見ればわかる。ためしにボールペンでノートに書き留めてみたが、文字で綴るのがこれほど恥ずかしいフレーズもあまりなさそうだ(本家とちょっと違うし)。  この空き地は、島民の社交場のような働きをしている、と思われる。やってきて日が浅いのでよくわからない。いまはぼくより若い子たちが集まっているが、午後になるとお年寄りが増えてくる。日が暮れてからはお酒を飲む人たちの溜まり場になる。  そんなに広い場所ではない。野球もできないくらいだ。するとすれば、内野手は、広場を囲む木の幹やイスと背中合わせで守備につくことになる。外野はナシ。  ぼくがいま掛けている木製のベンチのほかに、ひとり用のイスが何脚かあって、そのうちのふたつはどういうわけかIKEA のやつだ。 「にいちゃんもやろうだあ。遊んでのうてやぃ」  そう誘ってくれたのは大和くんで(なに大和くんだっけ? 大和なにくんだったっけ?)、十四か五くらいの生意気な感じの子。 「いいっす」、遊んでるのはぼくじゃなくてそっちでしょ。 「なんで? しんどいけえ?」 「別に」 「あ、ひょっとって、いきっとるけえ?」
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