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「…………」
──何もない。
「…………」
時計がない、見た目も変わらない世界がこんなにも進展のないものだとは思わなかった。
時間の進みが遅いとか、そういうレベルじゃない。例えるなら、真っ暗闇……まぶたを開こうが閉じようが、同じ漆黒の風景しか見えない空間にいたとしよう。
そこでは自分の手足も目視では確認出来ない。かろうじて自分で自分に触れ感触を得て、自分で発声して自分の耳で聞いたこと……自分で感じられる自分しか存在しない。
そんなところに居たとして、そこでは主観しか認識出来るものはないのだ。そして主観というものは、そこまで信頼のおけるものではない。
他のものと比較した時、初めてその自覚に意味を持ち、その自立が確かになるのだ。
だからその自意識が際立ちすぎると、逆にそれはとても不安定で、壊れやすいものとなってしまう。
単純に言えば、狂うのだ。この場合、体内時計が特に狂っている。それだけのことと笑うかも知れないが、それは自分の中に確立したものがないという、足場のなさと同じ感覚である。
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