独奏の、セラフィマ

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砲撃をチャージする直前でもあったため、『砲撃型エネミー』は無防備な状態にも思われた。 対象は動く気配もなく、ビームはその頭部の眉間に吸い込まれる……そんなイメージを確信した、その時であった。 象の耳が、ぱたりとはためいた。 すると、その眼前まで迫ったビームが、直撃寸前で不可視の何かに阻まれるように拡散したのだ。 『な……にぃ……っ!?』 それはまるで、蛇口から放たれた水が、ガラス面に落ちるかの如く。 その魔粒子全てが当たることなく、敵の目前で無効化されてしまったのであった。 狙いは完璧。射撃も通っていた。だからこれは、ヒノの力量の問題ではない。 『バカ、な……』 だがそれでも、大切な仲間を守り切れなかったことへの後悔は、どこまでもその心を蝕んでいく。 そんなヒノの心中など知るよしもなく、次の砲撃が無慈悲にも放たれたのだった。 それを止める術は、ここにはもはや無い。
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