独奏の、セラフィマ

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……ベースがその事実を知ることが出来たのが砲撃の黒い光を見た時だったのは、果たして幸運だったのか、不幸だったのか。 一同は誰一人ヒノを責めようという心など抱くことはなかったが、それでも本能から来る死への恐怖からは逃れられなかった。 逃げ場がないにも関わらず、少しでも遠くへ行こうと席を立つ者、現実から逃げるように目を背ける者、せめて堂々としていようと体を強張らせてその時を待つ者。 それぞれの思いごと、全てを黒い濁流が飲み込もうと迫った、その狭間へと。 最後の希望が間一髪で滑り込むのを、光からまっすぐ目を逸らさなかったミュウだけが見ていた。 突如飛来した六枚の羽根のようなプレートが、バリア・フィールドの手前で連なって円を形成したのだ。 すると、その中心に光の膜のようなものが発生した。まるでシャボン玉のような、透過する虹色の膜。 幻想的な揺らめきを見せるその面に、暴力的な黒い濁流が激突する。
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