階級

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「やめてくれ~」「人殺し~」  なんとも情けない声と一緒に、檻から追い出されたのは人間であった。ただの人間ではない。彼らはかつて、散々良い思いをしてきた連中なのだ。泡銭のように国民の血税を使い数々の贅沢を果たし、自分達の悪事も全て金でごまかしてきたような連中。  そんな彼らが贅沢な服を着たままで檻に入れられていた。  外に追い出された彼らは、蜘蛛の子でも散らしたかのように逃げ出した。  しかし、それは観衆に対する合図でもあった。 「SP!SP!SPはどこにいる!」  まるで、肥えた豚のように汚らしい声でSP、SPと鳴く。聞いているだけで耳障りだった。自分達の身も守れない彼らは、ザッと観衆に囲まれその場で袋叩きに遭う。観衆は各々に自宅から持ってきた道具を使い彼らを叩きのめし、罵声を浴びせた。 「しまった。今回は南通りに逃げたか」  北通りで彼らが逃げ来るのを待ちかまえていた信夫は舌打ちをし、妻や隣の男性を差し置いて、一人で逃げた彼らを追った。二人も遅れながら走り出す。  檻から出てきた人間は全員で百人はいた。人混みに紛れ逃げようとしても、普段から着ていた贅沢な服だ。すぐに見分けがついてしまう。人混みを避け逃げようとしても、拳銃を持った若者達の恰好の的となるだけだった。 「よっしゃー!元国会議員十点!」  国会では毎日のように居眠りばかりをし内容をよく理解しないまま拍手を送っていた議員の背中に命中させた茶髪の若者はガッツポーズをとった。それを、周りの者が諭す。 「足のトロいヤツに命中させるのは反則だろう」 「いいだろう。どうぜ、クズなんだ、どこを当てたって」 「いやいや。困るって、ちゃんと俺達の楽しみもとっておけよ」  他の者達はそう言いながら、背中を撃たれ身動きをとれなくなっている議員に近付く。彼は芋虫のようにグネグネと動き回っている。それを見て、ヘラヘラ笑いながらバットで両足を叩き、骨を砕いて楽しんだ。 「おいおい。寝るのはお前の特権だけど、まだ寝るなよ」  鼻ピアスをした男がそう言って議員の顔を持ち上げると穴のホースを突き刺し、そこから無理矢理、水を注入する。口から水をはき出さないよう顎を閉じさせた。
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