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信夫は逃げた連中の中で、少し前まで社員を捨て駒同然に扱っていた会社の人間を見つけると、躊躇なく背後からトンカチを振り下ろした。
グチャリと嫌な音がして男の顔の半分が潰れた。男の頭が潰れようと、信夫は何とも思わなかった。人を人として扱えない男の頭など機械と同じだと感じていたから。パソコンを壊すのと同じ感覚だった。いや、この男の場合、パソコンより劣る存在だ。壊してやって感謝してもらいたいぐらいだ。
楓は良く研いだ包丁で女の腹を切り裂いた。近所に散々、迷惑をかけ自殺者を出しておきながら平然としていた女だ。その腹の中を世間に公表しただけ、文字通り真っ黒な臓物が出てきた。
隣の男性は・・・グロテスクすぎるので書くのは省略する。
夕闇沈む通りは人々の血で埋め尽くされた。観衆は思い思いに、逃げた連中をイジメ通した。肉体的に、精神的に、過激に、陰湿に。吐き気が出るほどの。
彼らをいくら殺そうと裁かれることはなかった。それというのも、彼は特別な階級“イジメ階級”の人達であるから。
数十年前までイジメは大きな社会問題になっていた。学校、職場、近所、どこでもイジメは横行した。どんなにイジメを受けた被害者が訴えを起こしても、イジメた側は知らぬ存じぬで突き通し、イジメという事実、そのものを有耶無耶にしてきた。
しかし、世間に革命が起きた。何故、弱者がイジメられないといけないのか。そんな疑問が世間に浸透し、今まで権力者で好き勝手やってきて、その権威を盾にイジメてきた連中は全員、捕まり彼らこそが、真にイジメを受けるべき対象であるという世間の考えに従い、彼らは立場が逆転しイジメられるようになった。
当初こそ、そこまでする必要があるのかという声も一部からあったが、彼らが今までしてきた行為は聞けば聞くほどに、胸が痛み吐き気がするものばかりだった。だから、同情論も聞かれなくなった。まるで、彼らがしてきたことの再現であるかのように。
それにイジメられる彼らにも何の特権もない訳ではない。一般人では受けることができないような治療を無料で受けることができる。どんな大ケガをしようと、医療ロボット達によって完璧に治される。心臓や脳が破壊されようともだ。
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