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しばらくすると、魔力の濃度はそれぞれ異なるが、1人を除いた全生徒の杖に魔力がモヤモヤっと集まっている。
「どうしたー?ペイトン、お前だけ出来てないぞー。このまま荷物まとめて帰るか?お前の国から貰った入学金は返還しないけどな」
魔力の集まっていない杖を握りしめ、ペイトンと呼ばれた生徒の表情はよけいに険しくなった。
その時、カランと杖の倒れる乾いた音とともに勢い良くブリーズが立ち上がった。
「ちょっと先生、そんな言い方ないだろ!」
ズカズカ歩いてバートに詰め寄る。
「魔力の集約が上手くいったくらいで調子に乗ってんのか?こんな初歩の初歩もさっさと出来ない奴はこの先大変だって言ってんだ。我が国は、お前たちに魔術を教える義務はあるが、お前たちを魔術士にする義務まではない。だが、お前たちは違うんじゃないのか?お前たちには魔術士にならなければいけない義務があるんじゃないのか?お前もだブリーズ!他人の心配なんかしてないで、戻りなさい!」
返す言葉も見つからないブリーズは、せめてもの反抗に強く舌打ちをして引き下がった。
結局、この日ペイトンの杖に魔力が集まることはなかったのである。
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