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とある学園の教室
前髪で目を隠した少年の前で、ある太った少年がニヤニヤ笑いを浮かべている。
「ぐふふ……リンはずっと昔から僕のものだ。ふふふ、いいにおいだぜ」
首すじに暑苦しい顔をよせ、くんくんとにおいを嗅ぐ。
「いやぁ!!助けて!お兄ちゃん!」
幼いが美しい顔をした水色の髪をしたメイド服の少女は、助けをもとめて前髪で目を隠した少年に手を伸ばす。
「貴様!リンちゃんを返せ!」
「断る。そもそもお前に返せなどといわれる筋合いはない。彼女は僕の奴隷なのだからな」
目の前で彼女の首についている首輪を示す。前髪で目を隠した少年は悔しさのあまり、歯噛みした。
「くそっ……金の亡者リトネめ」
「ふん。だが僕も鬼ではない。『勇者アルテミックの剣』を取ってきたら、リンを解放してやろう」
その言葉を聞いて、前髪で目を隠した少年の顔に恐怖が浮かぶ。
「だ、だけど、あそこには魔物が……」
「別に俺はいいんだぜ。慈悲で希望を残してやっているんだ。いやというなら……」
リトネとよばれた太った少年は、いやらしくリンの首筋を舐める。
「きゃーーーー!!!!イヤ!」
嫌悪感にゆがむ幼い少女をみて、少年はついに決心した。
「いいだろう。待っているがいい!」
少年は教室を飛び出し、剣があるという封印の山に向かった。
祠の前
「ええと……この剣を抜けばいいんだよな」
ここに来るまでに魔物と戦い、全身傷だらけになった少年が、祭壇に刺さった光り輝く剣を抜く。
剣はあっさりと抜けて、少年は歓喜の笑みを浮かべた。
「やった。これでマリアを!」
少年がそういったとき、いきなり目の前の地面が割れ、深い裂け目ができる。
「ぐわっはっは!我は魔皇帝ダークカイザー!勇者の血を引くものよ。我をよく解放してくれた」
「僕が勇者の血を引くものだって……」
「封印を解いてくれた礼にここでは殺さぬ。我らの目が届かぬところで、ひっそりと生きるがいい」
次の瞬間、とてつもなく巨大な魔物が裂け目から出て、空へと駆け上がる。それに追従するように何万もの魔物が現れ、飛び去っていった。
「そんな……僕はなんてことを……」
呆然とうなだれる少年。
音楽が鳴り響き、オープニング画面が現れた。
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