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対する慎は自堕落でだらしがない。女が絶えることなく、いつも誰かしらと付き合う、彼は漁色家とのレッテルを貼られている。女なら誰でもいいのだろうと。事実だから仕方がない。
「僕はね、君がどうなろうと知ったこっちゃないけど、女遊びは程々にしたらと言いたいんだけど! わかる?」
言葉では応えず、煙草に火をつけ、一服してから頷く。セリフを付けるとしたら「はいはい」と言っているつもりだ。
「僕はね、普段の君の行いはとても褒められたものじゃないと思っているけれど! それと学業は別だから。妙な病気もらってせっかくのおつむが使い物にならなくなったら、それこそ我が校どころか、学会の損失だと思ってるわけ。わかってる?」
「そうかね」
「そんなに突っ込みたいなら、どこぞの節穴か段ボールに穴開けてしごいてればいいんだよ」
おいおい、武君。
慎は内心で苦笑する。
君の口から露骨なことを言ってくれるな。
慎に構わず武は真剣な表情を崩さない。
「つまらないことで失望させないでくれ。君は成果を残せる人なんだ」
成果か。
慎はポケットから菓子を一粒つまんで口に放り込んで、がりりと大きな音を立てた。
気付いているか?
君は無意識の内に自分が私より上の立場にいると宣言している。
その通りなのだが、あまり面白くない。品行方正な優等生へ向けて軽口を叩いた。
「君を好きになれたら良かったのだろうが」
はあ? と明らかに不機嫌そうに武は言った。
「僕、衆道に趣味ないから!」
「相変わらず、仲が良いのね」
聞かれた?
どこからどこまで?
ふたりはどきりとして後を振り返らず、目もあわせず、板書の練習をするように並んで立った。
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