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場の空気が一気に冷たさを帯び、先ほどプレアが見せつけていたときとは比べ物にならないほど鋭い視線があちこちから一斉に突き刺さってくる。
「あいつ雑種なのか!?」
「酒場に雑種連れてくるとか何考えてんだ!」
「雑種が人間と一緒に飯食おうとか考えてんじゃねーよ!」
「雑種は出ていけー!」
「雑種を叩き出せ!」
大勢の人間から一斉に罵声を浴びせられ、狼狽し立ち尽くすルミナ。そのすぐ近くの足元に叩きつけられたジョッキが割れ、飛び散った中身の液体がルミナの靴を濡らした。
「あのー……やっぱりここに泊まるのは――」
無理ですか、とソウタが訊ねる前に、店主は冷然とした口調で言い放った。
「雑種を泊める部屋はないよ。悪いけど他を当たってくれ」
「はは……ですよねー」
予想通りの店主の言葉を、ソウタは乾いた苦笑い浮かべずにはいられなかった。今まで三人で旅をしてきた中で、こんなことになったのは一度や二度ではなく取り乱すほどのことではないが、さすがに表情一つ変えず受け流すというわけにはいかなかった。
「あーあ……またやっちゃったわねー」
顔に向かって飛んできたジョッキを、軽く首だけを動かしてかわしながら、プレアはやれやれと言わんばかりに肩をすくめてみせた。
このウィルステラに生きる人々は人間以外の多くの亜人種と共存しながら暮らしており、人種や種族の違いによる外見の違いに対しては、ソウタが元いた世界の人間よりもおおらかだった。少なくともウィルスステラの人間たちは、肌の色が違うなどという理由で相手を差別したり見下しりはしない。
だが、そんな彼らも角を持つ人々に対してだけは話は別だった。
雑種(バスタード)。忌子の蔑称で呼ばれることもある角を持つ人々は、このウィルステラにおける唯一とも言える人種差別の対象とされている。
雑種がどういう存在であるかを説明する前に、まずウィルステラに住んでいる種族について説明しておこう。
最初は人間。人間については細かくする必要もないだろう。ウィルステラで最も人口が多い種族で、後述する他種族の全人口を足しても人間の全人口の半数にも及ばないほどだ。
人間はウィルステラのあらゆる地域に生息しており、住む地域によって肌や髪やなどの色が異なるものの、その外見も寿命もソウタが元いた世界の人間と全く変わらない。
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