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ソウタも目で「ありがとな、リュクス」と感謝の言葉を返した。
二人のそんなやりとりに気付いた者は、誰一人としていなかった。たった一人の例外を除いて。
「随分リュクスちゃんと仲良くなったみたいだけど、中で何かあったの?」
隠しても意味はない。ソウタはプレアに遺跡の中での出来事を全て説明した。
「そっか。リュクスちゃんを助けるために、力を使っちゃったわけね」
説明を聞き終えたプレアが、腕を組みながら吐息をついた。
「ごめんなさい、プレアさん」
一切の言い訳をせず、ソウタは謝罪の言葉を口にした。確かにあそこで自分が力を使わなければ、リュクスは間違いなく機械兵士の機関砲の前に命を落としていただろう。
リュクスを助けることで頭が一杯で、正体を隠すことを半分近く忘れていた。プレアとルミナのことをまるで考えていないと責められても仕方がない。ソウタの正体がばれるようなことがあれば、二人もタダでは済まないのだ。だから当然呆れられても仕方がないと思っていた。だが、次にソウタが感じたのは、頭の上に優しく手を置かれる感触だった。
「良い判断だったわね。さすがは私の息子だけのことはあるわ」
目の前にプレアの顔があった。こちらを見上げる表情は、慈愛に満ちた微笑だった。
今さらながら、この人は自分よりもずっと年上なのだと再認識させられた。普段は子供扱いされるのはあまりいい気分ではなかったが、今回ばかりは全く嫌な感じはしなかった。
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