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「お待たせしました。六人分のランチセットになります!」
ヘーゼルの弾けるような笑顔と共に運ばれてきた、風凪亭の人気メニューであるランチセットが、カウンター近くのテーブル席に座るソウタたちの前に並べられた。
「ごゆっくりどうぞー」
運んできたときと同じ笑顔を浮かべながら、軽やかな足取りでヘーゼルは次のテーブルの方へと歩いていった。本当に楽しそうだ。あれほど楽しそうに働く店員を、ソウタは元の世界でさえ見たことがなかった。
出来たばかりでまだ湯気が立っている料理に、ルミナは目の色を変えて飛びついた。
「落ち着けって。そんなに急いで食べなくても、誰も取ったりしないさ」
行儀の悪さを注意するにしては、ソウタの口調はやや甘いように見えなくもなかった。天真爛漫な妹と、それに振りまわされる兄のような二人を、プレアが穏やかな微笑みを浮かべながら見つめていた。
「ルミナはんはよう食べるなぁ。見てて気持ちがええわ。その調子でたくさん食べて、たわわに育った胸にダイブ出来るようになる日を、ウチは心待ちにしとるで」
ヘリヤの治癒魔法のおかげですっかり傷が癒えたリュクスが、久しぶりに雑種に対する行き過ぎた愛情を遺憾なく発揮する。
それを華麗にスルーしてヘリヤが切り出した。
「ねえ皆さん。次の依頼ってどうしましょう?」
「それなら、ちょうどいい依頼があるわよ」
ソウタたちの間で話し合いがスタートするよりも早く、依頼内容を記した紙を持ったシフォンが現れた。
「ヘリヤちゃん、あなた確かソーレル教の神官さんだったわよね?」
「そうですけど、それがどうかしました? あ、わかりました。シフォンさんもソーレル教に入信したいんですね。ちょっと待って下さい。そういうことなら――」
「まあそれは置いといて、実は神殿から依頼が入ってるんだけど、興味ないかしら?」
ヘリヤの勧誘を受け流し、シフォンは訊ねた。
「興味あります」
ヘリヤは即答した。神殿からの依頼という話が出た時点で、勧誘をスルーされたことは頭の中から消え去ったのだろう。
「依頼人のノエル司祭によると、できれば外部の人間には頼りたくないらしいの。だから神官であるヘリヤちゃんに声をかけてみたんだけど、どうかしら」
「もちろん受けます!」
「いや、そこはさすがに内容は確認しようよ! あと報酬も!」
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