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「やったで! そこの兄ちゃん、隣座ってええ?」
「ああ、遠慮しないで座ってくれ」
「おおきに!」
満面の笑みを浮かべながらお礼の言葉を口にすると、ミューアの少女はソウタの隣に腰を下ろした。
「さっきはきつく当たってごめんなさいね」
「ええよ、気にせんといて。さっきは確かにウチも礼儀知らずやったし。ウチはリュクスっていうんよ。よろしくやで」
「私はプレアよ。んでこっちが娘のルミナで、あんたの隣に座ってるのが息子のソウタよ」
「ルミナだよ。よろしくね、リュクスちゃん」
「ソウタです、よろしく」
ごく当たり前のように息子と紹介されて訂正しようか一瞬だけ考えたソウタだったが、結局そのことについては触れずにおいた。下手に訂正して面倒なことになるくらいなら、黙っておいた方が得策だろう。
「お待たせしましたー」
全員が簡単な自己紹介を終えたところで、酒場の店員がやってきてリュクスの前に料理を置くと、すぐに別のテーブルへと料理を置きに行った。
「あらあら、慌ただしいわねぇ。今夜はずいぶん混んでるみたいだけど、いつもこんな感じなのかしら?」
「ここが村唯一の酒場みたいやしな。こんな村の酒場にしてはなかなか大きいけど、街の酒場に比べたら全然小さい。ウチらみたいな冒険者が来たら、すぐいっぱいになっても別におかしくないんとちゃう?」
「言われてみれば、確かにそうかもな」
リュクスの言葉にソウタはなるほどと頷いた。元の世界でも、観光客を相手に商売をしているような店は、店の広さが追いついておらず、観光客が訪れるシーズンになると完全にキャパシティオーバーになっていた。それと同じようなことが、この村の酒場兼宿屋でも起こっているのかもしれない。
「へもほのほほーひほふほほいひいほ?」
ルミナが食べ物を口いっぱいに詰め込みながら言った。普通ならば何を言っているのか全く聞き取れないところだろうが、付き合いの長いソウタにはルミナが何と言っているのか簡単に理解できた。
「『ここの料理おいしーよ?』って? まあ、店の規模と料理の味が比例するわけじゃないからな。路地裏にある小さな店が、大通りにある有名な店より美味いなんてよくあることさ」
「ほーふーほほはほ?」
「『そーゆもんなの?』って? そういうもんだよ。一番おいしいのはプレアさんの料理だろうけど」
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