プロローグ――日常から異世界へ

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剣と魔法の異世界に転生したい。 思春期の少年ならば、誰もが一度は抱いたことがある夢だろう。 現実世界で枯れた日常を過ごしている者ならばなおさらだ。 典型的な非リア充側の高校生で、青春などという単語とはおよそ無縁の、ただ水で薄めて引き延ばしような無意味に流れていくだけの学校生活を送っていた暁海蒼太。 蒼太の夢は、ある日学校から帰る道中で突然叶えられた。 突如として視界が光に包まれ、意識を失い、目を覚ますとそこは夢にまで見た異世界だった。 異世界に転生した蒼太はの姿は、RPGやファンタジーに登場するドラゴンそのものに変化していた。 自分が人間ではなく怪物になってしまったことに絶望しかけた蒼太だったが、戻りたいと思ったらすぐに人間の戻ることができた。そしてもう一度ドラゴンのような姿に戻ることも簡単だった。 自由に変身できるのならば、ドラゴンの姿も悪くない。剣と魔法の異世界で生きていくならば、そういう能力が役に立つことだってあるかもしれない。 唯一驚かされたのは高校生だったはずの自分の体が、なぜか小学生くらいに戻ってしまっていたことだが、異世界で人生をやり直せると考えればむしろ幸運と言えるかもしれない。しかも、小学生だった頃の自分よりも、あきらかに可愛い顔をしている。このまま成長すれば、元の自分よりも確実に整った容姿になるだろう。 幸運はさらに続いた。地球の日本で生まれ育ち、英語の成績もいい方ではなく日本語以外の言語は全く使えなかったはずの自分が、なぜかこの世界の文字も言葉もはっきりと理解することができた。どういう理由かは全くわからなかったが。 異世界に転生した蒼太はすぐに近くの村に住む家族に、魔物に親を殺されて逃げてきた男の子として拾われた。 『蒼太』は『ソウタ』としてその家の子として育てられることになった。 それから六年の月日が流れる頃には、ソウタはすっかり剣と魔法の異世界--ウィルステラの住人となっていた。
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