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だから力の加減を決めることはソウタにとって最重要課題であり、攻撃を受けてノーダメージというのはあまりに不自然なので、全ての攻撃を魔力で防御して無効化するというわけにもいかなかった。
この辺りの事情を、プレアは全て把握している。ルミナも子供なりに理解はしており、今のところルミナが雑種だとばれたことはあっても、ソウタが竜人だとばれたことは一度もなかった。
「獲物はどこだぁー!」
「奪え奪え―!」
「ヒャッハー! 家畜だぁー!」
ソウタたちの接近に気付く様子もなく、ゴブリンたちは棍棒を振り回しながら耳障りな声で騒ぎ立てている。
「お母さん、このままじゃ!」
「わかってるさ、ルミナ」
狼狽した声をあげるルミナに応えつつも、プレアはゴブリンたちの群れに飛び込む決断ができずにいた。
魔族の武器や所持品が目当てとはいえ、村を守るという思いも頭にないわけではない。だが、相手は六匹、こちらは三人だ。闇雲に飛び込むのはリスクが大きい戦力差だ。
ソウタがいつもより少しだけ多めに力を出せば、あっという間に片づけること自体は可能だが、こんな村のど真ん中でその選択はありえない。
いったいどう攻めたものか、プレアが考えあぐねていたそのとき、
「この方向! 狙いは家畜ですね! そうはさせません!」
勇ましい声をあげながら、先ほど酒場で会った神官少女が追いついてきた。
「ワイの銃の錆にしたるで!」
「うわ、ゴブリンが六匹もいる……」
続いて魔晶銃(マキナシューター)を手にしていきり立つリュクスと、早くも疲れた表情を浮かべた浮かべているアリアも追いついてくる。
立て続けに現れた三人の援軍。これでこちらも数は互角。もはや躊躇う理由はない。
「よーし、行くよみんな! 魔族どもをぶっ飛ばすよ!」
「おー!」
「人数が互角なら一割も出す必要はなさそうだな」
「卑劣な魔族、覚悟してください!」
「宿代がかかっとるんや、気合い入れてくで!」
「あー、もうどうにでもなれ!」
それぞれ思い思いの声をあげながら、プレアたち六人はゴブリンの群れに襲いかかった。
「な、なんだあいつら!」
「こっちに向かってくるぞ!」
「人間のくせに!」
「へ、ちょうどいい。あいつらもとっ捕まえて、親分に差し出そうぜ!」
「獲物は人間どもに変更だー!」
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