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プレアからちゃん付けで呼ばれたアリアが、顔を真っ赤にして訂正する。
「あらごめんなさい。パッと見、女の子にしか見えなかったから」
そう言ってプレアは微笑んでみせたが、リュクスですら気付いたことを、娘を持つ母親である彼女が気付かないはずがない。要するにわざとだ。アリアの性別を見抜いた上で、からかって遊んでいるのだ。
「さっきはすまなかった。いきなりきつい言い方をしてしまって。ルミナをかばってくれてありがとう」
「礼には及びません。神官として当然のことをしただけですから」
礼を言う必要はないと言いながらも、ソウタに礼を言われた神官少女はやはり嬉しそうだった。
そんな様子で即席臨時冒険者パーティの面々が戦闘終了後の会話に華を咲かせていると、酒場の店主が拍手をしながらやってきた。
「いやぁ、お見事お見事! やっぱ冒険者ってのは強いもんだな!」
「おっちゃん。誉めてくれるんはいいんやけど、さっきの約束忘れてへんよな?」
「宿泊代と夕食代をタダにしてくれ、だろ? それくらいおやすい御用さ。遠慮なく泊まっていってくれ。もちろん、そっちの雑種のお嬢さんたちもな」
「本当ですか? ありがとうございます!」
店主から宿泊を許されたルミナが、満面の笑みを輝かせた。
村のあちこちで歓声があがっていた。村中が魔族撃退に沸き立つ中、一人の少女が路地裏に身を隠しながら、ソウタたちに複雑な視線を向けていた。
「早いとこ用事を済ませたいんだけど、もう少しだけ様子を見るとしましょうか」
そう呟いたのは、さきほど酒場で蜂蜜入りミルクをあおっていた少女だった。
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