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突如として村に襲来した最下級の魔族――ゴブリンの群れを退治した翌朝。
魔族退治したことで無事宿屋に泊めてもらうことができたソウタたちは、一階の酒場で昨夜共闘したリュクスたちと同じテーブルで朝食をとっていた。
「なぁルミナはん、頭の角触ってもええかな?」
「いいですよ? はい、どうぞ」
向かい側に座るリュクスからのお願いに、ルミナは少しだけ不思議そうな表情を浮かべながら頭を差し出すように少しだけ身を乗り出した。なお、ルミナが雑種であることはすでに周知の事実なため、昨夜と違って頭部を隠すためのフードは身につけていなかった。
「お、ええんか! おおきに!」
リュクスは声を弾ませると、おずおずと手を伸ばし、ルミナの額の角に触れた。
「あぁ~手触りなんじゃ~。ええんぁ、ウチも角欲しーなー」
「でも、角がついているとイジめられますよ? 今まであたし、この角のせいで何回も嫌な目に遭いましたもん」
人々の、雑種に対する差別心は根深い。昨夜もルミナが雑種であることがばれたせいで、一度は宿屋への宿泊を拒否されたばかりだ。もしゴブリンの襲撃がなければ、ソウタたちがこうしてここにいることもなかっただろう。
「……角があるかないかで何か変わるわけでもないのに、ホンマに馬鹿らしいなぁ」
「わたしもそう思います。だけど、いつかきっと、わたしみたいな雑種が差別されなくなる日が来るって信じてますから」
「雑種ファンの一人として、一日でも早くそんな日が来るのを祈ってるで」
「ありがとう。リュクスみたいな考えの人が増えれば、いつか雑種が差別されなくなる日が来るかもしれない」
ウィルステラに転生し、ルミナと兄妹のように育てられたソウタは、ルミナが受けてきた仕打ちを全て見てきた。生まれ育った村でのルミナへの苛めは壮絶で、ソウタが元いた世界でクラスメイトから受けていた苛めなど、取るに足らないものだということを思い知らされた。幼いルミナを苛めから守ってやることができただけでも、ウィルステラに来てよかったとソウタは思っていた。
「ヘリヤちゃんだったっけ? あなたはどうしてこの村に?」
プレアが神官の少女――ヘリヤに向かって村に来ていた理由を訊ねた。
「私はソーレル教の教えを広めるために、アメルシア公国に向かう途中なんです」
つまりは布教のためだ。
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