423人が本棚に入れています
本棚に追加
涙目になって声を張り上げたアリアを無視して、少し離れた位置に座っているルミナを一瞥してからヘリヤが声をひそめてプレアに訊ねた。
「…あ、あの、向こうにいるお子さんなんですけど、雑種……ですよね?」
「そうよ。何? やっぱり、神官としては気になる?」
「……生まれながらに角――魔族の特徴を持つ忌子。親からはそう教えられましたから」
「忌み子か……ま、世間一般ではそうかもね。でも、それがあの子の全てを決定しているわけじゃないでしょ?」
「それは……そうかもしれませんけど……」
「私がこんな職業でフラフラしてるから、あの子、一緒に旅をしてるソウタしか友達がいないのよ。もし良かったら、二人とも仲良くしてあげてくれないかしら?」
「わかりました……と言っても、この村に滞在する間だけになっちゃいますけどね」
「……検討しておきます」
プレアの言葉に、アリアは頷いた。頷かなかったヘリヤも、適当な言葉でお茶を濁しているようには見えなかった。おそらくは、自分自身が感じたことと、今まで周囲から言い聞かされてきたことの間で葛藤しているのだろう。
ソウタやプレアたちの会話に花が咲いていたところに、入口から入ってきた初老の男性が近づいてくる。
男はテーブルの近くまで来たところで足を止めて口を開いた。
「お食事中失礼。皆さんが先日、ゴブリンの群れをを退治してくださった方々で間違いありませんかな?」
訊ねてきた初老の男からの問いかけに、最初に反応したのはアリアだった。
「確かにそうですけど、あなたは?」
「申し遅れました。私はこの村で村長をしておりますネモと申します。実はみなさんに依頼したいことがありまして……」
初老の男はこの村の村長であった。村長自らやってきてまでの依頼とはいったいどんな内容なのだろうか。アリア以外も顔を上げて、村長と名乗った男の方へと目を向ける。
「言うとくけど、ウチらはパーティやないで。昨夜はたまたま一緒に戦っただけや」
ソウタたちが同じ冒険者パーティだという前提で依頼を持ちかけてきた村長に向かって、リュクスがそう訂正した。
「そこをなんとか。今回だけでもお願いできませんか。ゴブリンの群れを一掃した皆さんの腕を見込んでの依頼なのですじゃ」
下手に出ながらも、村長はあくまでソウタたちを一つのパーティとして扱った上で依頼をしようとしている。
最初のコメントを投稿しよう!