第一章 始まりの村 前編 狙われた村

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「いつも通り、ルミナことよろしく頼むわよ」 そう言って再び前を向くと、プレアは前方の奥に見えるカウンターに向かって歩き出した。 「行くぞルミナ。なるべく俺のそばから離れるんじゃないぞ」 言われた通りに、自分のすぐ後ろに立っていたルミナを促してからプレアの後に続いて歩き出す。 「もう、ソウちゃんったら。いつまでも子供扱いしないでってば」 ルミナは歩き出してすぐに横に並ぶと、こちらの顔を見上げるように覗き込んできた。不満そうに口を尖らせているその顔は子供以外の何者でもないが、それを言ってもさらに不機嫌させるだけなので黙っておく。 この子供らしさ丸出しの少女はルミナ・レーギア。名字から分かるとおり、言うまでもなくプレアの実の娘であり、頭に被ったフードの下には若かった頃のプレアをさらに幼くしたような顔が隠れている。 四つ年下のルミナはウィルステラで出来た最初の友達であり、幼い頃からいつも一緒に遊んでいた幼馴染みであり、同じ家で育てられた妹のような存在でもあった。 ルミナにとって、友達と呼べる相手はソウタ以外には誰もいなかった。これは決してルミナが度の過ぎたお兄ちゃんっ子だったからという微笑ましい理由からではない。 ルミナは幼い頃、同じ村に住む子供全員から苛めを受けていたのだ。仲間外れにされることなど序の口で、石は投げられるわルミナが触ったものは捨てられるわそもそも名前でさえ呼んでもらえないわで、もはや苛めというよりそれは迫害と呼べるレベルにまで達していた。泣いて家に帰ってくるルミナの顔を見て、苛めた連中を叩きのめしてやりたいと思ったことは一度や二度ではない。 苛めの原因は確かにルミナ自身にあったが、ルミナに非はなかった。生まれつき持っていた体のある特徴が理由でルミナは、村の子供たちから、いや村全体から迫害に近い扱いを受けてきたのだ。 ソウタが視線に対して無意識に身構えてしまうのは、大勢から一斉に視線を向けられるという状況が、苛めからルミナをかばっていた頃の記憶が蘇るからだ。
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