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冗談じゃない。とんでもない紹介をされ、思わず口を挟もうとした矢先に、プレアが親しげに身を寄せてくる。
「ここ最近野宿が続いていたけど、今日はゆっくり休めそうね。あ・な・た」
甘ったるい声で言いながら顔を近づけられ、ソウタは心臓が撥ね上がるのを感じた。
いくらウィルステラに来てからずっと親子同然に過ごしてきたとはいえ、実の親子ではなく血の繋がりはない。
しかも母親とは言ってもプレアはまだギリギリではあるが20代であり、ソウタとの年齢差は親子と言うよりは姉弟に近い。
加えてプレアは年齢よりも若く見えるタイプで、一緒にいて恋人同士だと勘違いされたことも一度や二度ではなかった。
ちなみにルミナとは恋人同士だと思われたことよりも、仲の良い兄妹だと思われた回数の方が遥かに多い。閑話休題。
親子と呼ぶには歳の近い女性に吐息がかかるくらいまで顔を寄せられて、何も感じない思春期の男がいるはずがない。
元の世界で彼女がいたことがなく、女性に免疫のないソウタにとってプレアの過剰なスキンシップは刺激が強すぎた。
(というか……腕に当たるこの感触は……)
絡められた腕に、柔らかい何かが当たっている。それが何かを考えようとして、ソウタは一瞬で思考を放棄した。考えるな。考えた結果それが何かを理解してしまったら、きっと理性が耐えられない。
「プレアさん。その……当たってます」
決してどことは言わず、ただ体の一部が当たってしまっていることをプレアに伝える。
「あら、何が当たってるのかしら?」
プレアはわからないと言いたげな表情を浮かべながら、首を傾げてみせた。
絶対にわざとだ。きっと心の中でこちらの反応を楽しんでいるに違いない。
言葉にして口に出した時点で、それが何であるかを認めざるを得なくなる。だが、いくら言ったところで、遠回しな表現ではプレアは離してはくれないだろう。ソウタは仕方なく恥ずかしさをこらえて口を開いた。
「胸です……胸が当たってます」
顔から火が出そうなほど恥ずかしかったが、何とか言ってやった。ここまで言えばプレアも満足して離れてくれるだろう。そう思っていた。だが、
「そりゃそうよ。だって当ててるんだから」
一切悪びれることなく、平然とプレアは言った。
そのとき、ソウタは背中に無数の刺々しい視線が突き刺さってくるのを感じた。
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