第1章

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目を見張る光景が、起きている。 長い黒髪が一心不乱に揺れている姿もそうだが、驚くのはその卓越したスティック捌き。 自由自在だ。まるで、スティックに意志が宿っているかのよう。 大太鼓、小太鼓からなる重低音に、シンバルの連続する甲高い金属音が交わり、絶妙な音色となって耳に、頭に響いてくる。 生き生きとした演奏は圧倒的だった。胸に、身体中に響き渡り、俺はただただ聴き惚れていた。実質の演奏時間は、一分にも満たなかっただろう。 「崎本さんすごいっす!」 「舞ちゃん、やっぱり天才!」 二人が口々に感想を口にする中、崎本は髪を振り払い俺を直視する。 「イケメンくんは?感想、ないの?」 「……」 強がっていても意味ねぇか。 「……圧巻だった。すげぇよ」 「素直な感想ありがとー」 棒読みだし、嫌味にしか聞こえねぇよ。ほんと、可愛いげのない女。 そんなやり取りを交わしていた横で、南がなにやら物色していた。 「うん、これがいい」 との声が聞こえ、俺のもとに歩いてくる。 「はい、蓮くんのギター」 差し出したのは、一般的なエレキギターだった。が、俺は受け取らない。 「いや、いいよ」 「なんでですか?折角私が選んだのに。まさか、バンドやらないつもりですか。蓮くんメンバー揃ったらやるって言ってたじゃないですか」 「考えてやるって言ったんだよ。……いや、まぁ参加はするけどよー。あれだよ、普段使ってるやつの方が扱い慣れてるからそっち使おうと思って」 「なるほど、つまり本気でやるってことですね」 「あ、あぁ……」 チラッと崎本を窺うと、なに食わぬ顔をしていた。 俺を本気にさせやがって、目に物を見せてやる。 「明日、持ってくるから」 と約束して、俺は音楽室を後にした。
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