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「お前はしないのか?結婚」
懐かしさを噛み締めながら、ついそんなことを口走っていた。
「ハハ、結婚なら僕より怜の方が早いんじゃないかな」
圭は笑いながら、スルメやジャーキーなどの乾物やチーズや叩ききゅうりなどのおつまみ小鉢を次々テーブルへと置く。
さすが主夫歴10年以上の腕前だ。
「あいつらまだ続いてんのかよ」
怜には高校三年の時から付き合っている彼女がいる。
正直地味で冴えない女だってことしか印象に残っていないが、年下でも怜と対等に渡り合うほどの頭脳と技量を持ち合わせた女――坂口菜穂子だ。
最後に会ったのはやはり高校卒業の時。
不本意さを滲ませた表情でもらった卒業祝いの花束は怜の半分以下のサイズだった。
「二人共結婚の話をしているらしいけど、お互いの仕事が忙しいからね」
怜はまるで息子を心配するオカンの口ぶりだ。
「怜は出張ばかりでしょ?菜穂子ちゃんも学芸員として全国飛び回ってるらしいから。
一応今日も声を掛けたんだけど九州にいるんだってさ」
「…逢いたくねぇな」
「そう言えばユキって菜穂子ちゃん苦手だったよね」
クククと笑う圭に、ジロリと一睨みしてクイッと酒を煽る。
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