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「それにさ、」 と、圭は烏龍茶を呑みながら料理レシピ本をめくる。 「なんだよ?」 「まずはミヤの花嫁姿を見る方が先だよ」 圭はさらりとそんなことを言った。 ――真顔でだ。 …コイツはジジイになるまで結婚をしないというのだろうか。 「ミヤの花嫁姿って……、十数年後の話だよ」 「それはオーバーだよ。 ミヤだって年齢的にはもう結婚出来る歳なんだし、ミヤに見合う男が現れれば喜んでミヤを送り出すさ」 ハハっと圭は笑う。 圭と双子の兄の怜は、高校時代から妹のことを目に入れても痛くないほど溺愛しているシスコン兄弟で有名だった。 校内では常つ圭の周りは女で溢れてイチャコラを繰り広げていたが、学校が終われば女たちの誘いを一切断り、ウキウキと学童へ妹を迎えに行くのだ。 そして帰りがけにスーパーで買い物をして、一緒に夕食を作る。 合間に妹の宿題をみながら、お風呂の用意や洗濯物の取り込みなど働いている母親に変わり主夫業に勤しむのが圭の日常だった。 それがコイツにとっては何よりも“至福”の時間。 「んなこと言いながらアイツにちょっかいを出すクソガキどもを返り討ちにしていたのどこの誰だよ」 「ハハ、返り討ちにしたのは僕じゃなくて怜だよ」 圭よりも怜のほうが妹につくムシを徹底的に排除していた。
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