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時刻は夜の9時を過ぎた頃。
「おばさん達いつ帰ってくるんだ?」
そう、ふと思ったことが口から出ていた。
圭や怜、そしてミヤの両親は今二人揃ってシンガポールに赴任中だ。
だからこの家は兄妹三人暮らし。
「赴任期間は三年だから来年の春には帰国予定かな。
ただ正直、帰国はどうなるか分かんないって父親はボヤいていたよ」
圭はページを捲る手を一旦止めた。
「おじさんの身体は大丈夫なのか?」
「うん、母親がきっちり体調管理しているから大丈夫みたいだよ」
大月家の父親にシンガポール赴任に辞令が下ったのはミヤが中三の時だそうだ。
初めは受験を控えたミヤを気遣い父親一人で単身赴任をしたが、慣れない環境に体調を崩してしまったらしい。
そしてそれを心配した母親は看護師の仕事を辞めて、ミヤと一緒に赴任先へ行こうとしたそうだ。
「でも本人が断固拒否。
三年で日本に戻ってくるなら、私は行かないから!ってミヤが言い張ってね」
圭の温和で寛容な性格は父親似で、怜の淡々とした実直な性格は母親似だ。
ここの双子は顔はそっくりだが、性格は真逆と言っていい。
しかし妹のミヤはどちら寄りでもない。
圭が言うには、
『父親のマイペースと母親の意地っ張りの混合』だそうだ。
…なんとなく、頷ける。
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