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「お願い、教えて?
魁人君が最後に言ったこと‥‥。」
田渕の言葉で
うごかなくなった貧弱な心を叱責され、
覚悟を決めて力強く頷く山伏。
『━━もしオレが生きて
戻ってこれたら‥‥‥━━━━
━━━【オレと付き合ってくれないか?】って!!』
『━━━━━!!』
魁人君‥‥‥!!
リコは山伏の言った一言に
魁人を思い浮かべてしまう‥‥
似ているのだ‥‥‥。
『あの人』と『この人』が‥‥‥
スッ‥‥‥‥!!
そっとオレの左手を
両手で手に取る田渕。
ドキドキドキドキ‥‥‥
オレの鼓動が高まった。
同時に田渕さんの両手からはオレよりも
温かいやわらかな熱が伝わってくる。
悲しい……そう思っているのが
オレでも分かってしまう。
涙を流しながらこちらを見つめ、
オレの左手に滴を
ポタポタと落としているから。
『‥‥‥………っ!!
田渕さん‥‥‥‥、、、
………いや━━━━━━
━━━━【リコ】━━。』
『………!?』
山伏が突然名字では無く
名前で呼んだことに田渕は、
思わず山伏の手を握る手が
凍りついたかのように止まった。
何かを決心した山伏は
その口を開いて真実を告げる。
『‥‥‥オレは、、"魁人"じゃないんだ‥‥。』
現実を見ろという励ましとも
叱責とも言えない言葉だった。
田渕の目からさっきよりも
大粒の涙が溢れだした。
そして、山伏に抱きつく。
椅子に座る山伏に許しを乞うように
床に膝を着きながら。
『田渕さんっ!?』
勿論山伏は顔を真っ赤にして驚く。
『"山伏ぐん"はいなくならないで‥‥!!!
ずっと一緒にいて‥‥‥!!!』
(この子は恐らく
魁人はもう戻って来ないと思って‥‥‥‥!!
だからオレを魁人に見立てて‥‥
やはり、トラウマは
"人の心"を狂わせる‥‥!!)
『田渕さん、魁人はまだ生きてる!!』
突然そんなことを言い出した山伏。
どう考えてもその言葉は
嘘にしか聞こえないことを
分かっている筈だが………。
「‥‥‥‥‥見たの?」
涙声のまま、
山伏から離れようともせず
そう聞いてくる田渕。
『見てないよ!!
魁人の無事な姿も魁人が"死んだ姿"もっ!!』
(死んだ姿‥‥?)
山伏はいつの間にか
熱くなってそんな事を言っていた。
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