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「楽しそうだなぁ。」
オレは再び出血した右手を
近くにあったテーブルの間にある
水道で洗っていた。
なんか理科系とか家庭科系の部屋の水って
やたら勢いが強いのは何でだろうな?
そんな呑気に
右手を傷口に触れないように
洗い流していた。
濡らして染みてくる痛みは
微妙にヒリヒリして
掻きたくなってしまう。
そんな山伏の様子を
じっと見つめているのは
茜と佳奈だった。
「おーいてて‥‥やっぱり無理して
身体動かすとロクな事ねぇのかもな‥‥。」
オレは直接触れないほど
皮膚の抉れた手のひらに
軽く息を吹きかけていた。
しかし、痛みの事もそうだが
今はこれからどうすべきかも
考えなくてはならない。
もう午後3時過ぎ。
学校の終わる時間も過ぎてしまった。
季節はだいたい夏で7時までは
日が届くかも知れない。
だが、この学校の死人の位置が
またもやはっきりしていないこの状況だと
動かない方が安全な策だ。
でもみんなお腹減ってるし
本来の力を発揮出来ない。
どうすべきなんだろ‥‥?
いっそオレ‥は戦力にならないから
他のみんなに食料になるものを
調達してもらうとか‥‥?
いやそれだとみんなが
死人の食料になりかねない。
「ん‥‥茜?」
何だろうか茜‥‥
‥‥‥と佳奈ちゃんがこっちに来てる‥‥?
「‥心配してたんだよ?雄‥‥。」
「えっ!?」
ギュッ‥‥‥‥
茜がオレに抱き付いてきた!?
制服越しとは言えほのかに
伝わってくる命の温もり‥‥。
肩まで伸ばした髪からは
女の子特有の匂いがして
オレの顔を包み込んだ。
女の子って何でこんないい匂いがするんだ?
……ってそうじゃなくて……!!
『あ、茜……?
どうしたんだよ急に……!』
「だって雄が危ない事に
首を突っ込んで行くから‥‥!」
長い付き合いとは言え女の子に
くっつかれるのは慣れない。
「茜‥‥心配してくれてたんだな
ありがとう………でもオレが
やってる事は誰かがやらなきゃ
いけない事なんだよ。」
そう……誰かが。
『でもっ雄じゃなくたっていいじゃない‥‥。
こんな手で死人達の所に行くなんて‥!』
茜なりにオレのことを本当に
心配してくれてんだろうな……。
必死さが伝わってきた。
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