Chapter-18-New-world-

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  『だから心配してくれてただけなんだって!!』 相変わらず山伏は女子メンバーの 変化に気付くことなく 否定の言葉を並べていた。 「心配するだけであんなに迫るのかよ? オレが止めなきゃキスしてたんじゃないか?」 ノブが苦笑いしながら 先程の状況の疑問を言う。 「そ、それは確かにそうかも‥‥。」 唸るような顔で 喰らい付いて追及してくるノブに 山伏も渋々納得するような顔で受け答えする。 「仕方ねぇと思うぞ。 2人ともお前に命を懸けて 救ってもらったんだからな」 王羅は山伏と魁人がヒーローの如く 助けたからだと本来の理由を述べた。 それは山伏も魁人も 自身から見れば尊敬に値する 真の漢であると言うことを 素直に言い現したつもりだったが 『いや、命懸けたのは魁人だけだ‥‥‥。』 山伏はそれを別の意味で捉えた。 「‥‥わ、わりぃ」 王羅も王羅で失言をしてしまったと すぐに自覚して咄嗟に謝るが 1番心を傷めているのは……… 「いや、いいよ 誰も責める事はできないから。」 山伏の心情は実に 不安と自責の念でいっぱいだった。 「良い感じって言うなら 佐野も変わんなくねぇか?」 そんな2人の流れを変えるように 別の話題を振って指を差す杉村。 その方向に目をやると、 技術室の端で佐野の頬の切り傷を 相澤が手当てしていた。 『イッテェッ!!』 無理に我慢していた佐野が 悲痛の叫びをあげた。 「何が大丈夫よ血が出てるよ?」 佐野を優しく気遣いながら 濡らしたハンカチで佐野の頬の傷と そこから滴る血を拭き取る相澤。 「‥‥‥オレ、魁人に託された事があるんだ。」 端から見れば微笑ましい やり取りをしている佐野と相澤を見ても、 抱いていた決意と後悔は変わらず 山伏は独り言のような小声でそう言った。 「魁人に?」 山伏の言葉にノブは何かに勘付いたように その人物の名前を聞き返した。 「あぁ‥‥その子と2人切りで 話がしたいから邪魔はしないでくれよ?」 『おう………、、、』 3人から小さな生返事を 受け取ると山伏はその場から離れた。 「なんだろうな?」 ノブが咄嗟に杉村に聞く。  
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