第1章 最悪の出会い

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    ⑨ 「決まってるだろ、当たり屋だろ。  いるんだよ、そういうヤツ。借金をなんとかしたくてワザとクルマにぶつかるヤツ。  いやあ、あんたも災難だねえ、こんな疫病神のような女にぶつけるなんて。  覚悟しなよ、相場の5割、いや、10割増しでふんだくられるぜ」  男は七海と瀬名に視線をいったりきたりさせながら、嗤い声をあげた。 「違います! そんなんじゃありません!!!」  七海がほとんど叫ぶようにいう。  いった瞬間、七海の顔が苦痛にゆがんだ。 「七海!」  母親がナースコールのボタンを押す。 「もう、帰ってください!」  男に向かっていうも、男はその場を動こうとはしない。  なにかに気づいたかのように、じろじろと瀬名の顔を見つめている。 「どこかでみたことがあるな、あんたの顔」  そこへ担当のナースが駆けつけてきた。 「どうかしましたか?!」  そのときになってはじめて男が動いた。  去り際、男が瀬名に指を向けていった。 「そうだ、『悲劇のエース』くんじゃねえか」  
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