第1章 最悪の出会い

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⑪ 「あの男はなんなんだ?」  瀬名が諭にきく。 「借金取りです」  予想通りの答えが返ってきた。 「よかったら、事情を話してくれないか」 「はい……」  諭がぽつり、ぽつりと語りだす。  諭の父・下條茂(しもじょう・しげる)は下町で小さな印刷工場を営んでいた。  しかし、最近の不景気の波に呑まれ、経営は悪化。  赤字を補填すべく株や先物取引に手をだし、さらに傷口を広げてしまった。  借りられるところからはすべて借り、それでも足りなくなった茂はとうとう闇金にまで手を伸ばし、負債総額は一億を超えるまで膨れあがる。  とうてい払いきれるものではない。  茂は”とんだ”。  行き先も告げず、ふらりと家をでたまま消息を絶ったのだ。  家族が茂の負債総額を知ったのは、そのあとであった。 「姉ちゃんは親父の行方を追っていたんです。  その矢先に…その……事故に……」  諭がいいにくそうに”事故”という言葉を口にする。 「いいんだ」  瀬名はうつむく諭の手を握った。 「悪いのはぼくだ」  
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