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③
「でも、おまえ、なんだって……」
母がそのあとの言葉を飲み込む。
いいたいことはわかっている。
なぜ……
赤信号の交差点に飛び出したか?
「そりゃあ、ショックなのはわかるけど……」
「家、とられちゃうんでしょ!」
母を難詰するかのように七海が声をあげた。
「お父さんはどこ?! どこへいったの!」
「姉ちゃん!」
諭が再び七海の肩を押さえつける。
「絶対安静だっていったろ! 興奮すんなって!」
「…………」
七海は唇を噛んだ。
母に怒りをぶつけてもしょうがない。
家族に隠して、借金を放置してきた父がすべて悪いのだ。
「あたしをはねたひとは……?」
王子様のような上品な顔立ちのあのひと。
七海はかえって申し訳ない気持ちになっていた。
あのひとは悪くない。
信号を無視してふらふらと飛び出した自分がみんな悪いのだ。
「なんていうか……」
なぜか瞳をキラキラと輝かせて諭はいった。
「姉ちゃんはスゲーひとにはねられたんだよ」
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