第1章 最悪の出会い

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④  スゲーひとにはねられた?  なにをいってるんだろう、このコは?  七海は紅潮した弟の顔をまじまじと見つめた。  弟の諭は17歳。東京都内の都立高校に通う高校2年生だ。  部活は野球部に所属してレギュラー入りを目指している。  が、いまだにベンチ入りさえできていない応援のスタンド要員。  その弟の顔が興奮して輝いている。  野球大好きの諭のことだ、もしかして……  そのときだ、ノックの音がして、スライド式の病室のドアが開いた。  背の高い男のひとが背中を丸めて入ってくる。  そうだ、このひとだ! あたしを『白い馬車』ではねた王子様。 「よかった。気がついたんですね」  王子様は七海の顔をみるなり、安堵の笑みを浮かべ、そして勢いよく頭を下げた。 「このたびは本当に申し訳ございません!!」  ひざに額がくっつく。  体がやわらかく、腰のところできれいにふたつに折れている。  やっぱり……  七海は確信した。  このひとはアスリートだ。  
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