まだ鮮明なる記憶

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母さん 来たよ 母さんが好きで、いつも話してくれたこの場所 僕の名前の由来となったこの場所に 僕の子供も生まれたよ?男の子。名前は航。 みんな大好きになったよ?ここ。 母さんが一瞬で好きになったように。 母さんの壮絶な人生。 父さんから聞いた。 父さんは……まだ母さんを想って、後悔の中で生きてる。 僕にはどうしてあげることも出来ないけれど。 母さんの人生はいつも何かを求めていたんだね? 僕は子供だったからいろんなことに気付くことができなかったけど、母さんの傍に居てずっと見てきた人たちに逢ったよ? みんな懐かしそうに話してくれた。 母さんの優しさ。 母さんの真っすぐなところ。 母さんの愛の深さ。 周りの人はみんな、母さんに元気をもらっていたと話してくれたよ。 母さんもみんなに守られていたんだね…… 海に向かってそう囁いているのは、広海。 子供のころから何度もここを訪ねて、そのたびにこの場所を好きになっていったことを思い出している。 波打ち際で遊ぶ妻の香奈と息子の航を愛おしそうに見つめ、この姿を母にも見せたかったと……心から思う。 母の愛の壮大さ。 どんなときにも僕のことを考えてくれてた母の愛を、今更ながら身に浸みて感じながら。
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