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「結婚、するのか」
「ああ、近日中に結納交わして、仮祝言だよ。これから忙しくなる。ああ、でも」
武は首を傾げる。
「何だって慎君が見合いの話、知ってるのさ」
「どうでもいいだろう、そんなことは」
「よかないよ。僕、君に言ってたっけ。そもそも見合いするって言って出たっけかなあ?」
「きいてなかったと記憶してるが」
「だよね、じゃ、誰から聞いたの。柊山先生?」
「いや、ちがう」
「うーん、先生は口が固いと思ってたのに、違うところから話が漏れたんだな、気をつけてくれるように言っておかないと。今回は話がまとまったから良かったようなものの、流れちゃったら噂になってたことを知らされる側が二重に辛いだけだから」
「お前なら何があっても平気だろう?」
「何で僕なのさ、妹が泣くじゃないか」
「いもうと?」
聞き返す慎の声音は間抜けたものになる。
「見合いって、その、お前のじゃないのか」
「え? 何だって?」
「いやだから、結納して結婚するのはお前だろう?」
「誰が? 誰と? 僕が、誰と?」
武はくりっと目を見開き、ぽかんとした口をする。
次に、膝を打って大笑いした。
「嫌だなあ、僕じゃないよ。今言った通り、妹のお見合い。今時、女余りでなかなか縁付けらんないだろ、でも誰でもいいってわけにはいかないからさ、柊山先生に口利きしてもらったの。うちは両親とも死んじまって、僕ぐらいしか残ってないからさ、親代わりに立ち合ってきたんだよ、一回で話がまとまらないと妹も辛いだろうし? こっそり里に帰ってた」
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