第1章

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大学院に籍を置く慎は、白鳳大学の柊山教授の元に身を寄せ、大学の教員を目指していた。 武も野原も同様だ。 慎は二人に遅れての編入だったが、遅れを楽しんでいた。 追われるより追う方がやりがいがある。 実際、編入してあっという間に武と並び立つ位置に立っていた。 当然のことだ。誰に対しても負けるわけにはいかない。 行く先々で、同性からは羨望と嫉妬を、異性からは憧れを持って眺められる。慎は全てを受け流していた。 男性なら1cmでも分けて欲しいと願う長身に、整った顔の組み合わせは異性を強く惹きつける。成人男子の標準より少しばかり低い武と並ぶと大人と子供ぐらいの差があった。しかし、男ぶりは武の方が勝ってる。武は身だしなみに一手間以上かけることをためらわないのに対し、慎はまったく構わない質だった。武と比較すると、とかく見劣りがした。 彼に秋波を送る複数の視線を無視し、売店前の水溜まりでしかない噴水池へ向かう彼の行く手から黄色いボールがコロコロと転がって来た。 そのボールには足が二本ついていて、目が2つにくちばしがひとつ、ついでにぴよぴよ可愛らしい鳴き声をたてていた。 慎はあっけにとられてその場に立ち尽くす。 ひよこじゃないか??? それぞれがてんでばらばらの方向に駆けていて、内一羽が彼の下駄の上に飛び乗り、鼻緒に顎をもたせかけてた。 む。動けない。 落ち着きなく首を動かすひよこをどうしたものか。ぴいぴい鳴く一羽とにらめっこをしていると、ひよこたちが駆けてきた方向から馴染みのある男女の声近づいてきた。
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