第1章

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「これも数の内に入るか?」 ぴいぴい鳴く雛を顔の前に突き出され、武は「もちろんだよ!」と答える。 「わかった」と言って慎は木箱にひよこを加えた。 「すみません、ありがとうございました」 女は何度も何度も頭を下げた。 雛たちの合唱は儚くて、どこか気が抜ける。慎は会釈もそこそこに武たちの脇を抜けた。 「ありがとう、助かったよー」 「それはよかった」 「また後でね」 「ああ」 慎の背後から聞こえてくる会話は打ち解けたものだ。 武君の知り合いなのか?  少しばかり気になった。しかし、頭を上げたり下げたりが忙しくて、顔も満足に見えなかった女はただの通りすがりでしかない。 私には関係ないな。 慎は歯がすり減った下駄を引きずり歩く。先を行く間に、女のことも、鼻緒に身を寄せた雛の温もりも、すっかり記憶から抜け落ちていた。
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