第1章

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なおさら放っておけない。 声がする方へ足を向けると、布地が裂ける音がした。 「止めて! 人を呼びますよ」 「呼べばいいさ、誰が来る? お前を助けてくれようとするっていうのか? そんな酔狂な男、いるもんか」 男と女がもみ合う様子に、野次馬が集まってくる。娯楽に乏しい昨今、女には災難なことだが、襲われる様ですら見世物になってしまう。 まずいな。 慎は周りを睥睨する。大男から睨まれてこそこそと逃げる出歯亀に一瞥をくれ、彼は路地に向かう。 「おとなしそうな顔して、方々に取り入ってるって知らない奴は学校内にいないんだぞ! おかしいだろ、男だって普通に出願したってうちの学校にはまず入れないんだ、柊山に身体で物言わせて席を用意させたってもっぱらの噂だぞ!」 野原は福留へ気丈に言い返した。 「先生は、そんな方じゃありません!」 「同感だな」慎は彼女に同調した。 福留は飛び退いて、闖入者に向かって大声を出した。 「わ、悪い趣味だな!」 「そりゃどうも」会釈して応える。「君よりはましだと思うが」 きょろきょろと視線を彷徨わせ、福留は思いついたように言う。 「どうだ、きさまも混ざらないか。一人も二人も同じだろ」 「は?」 彼が顎をしゃくった先にいるのは野原だ。
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