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彼は電話で大事な話があると言っていた。
明るい雰囲気ではなく、何か思いつめたような慎重な声色。
私が「何?電話でいえない事?」と聞くと、「合って話したい」の一点ばりだった。
普段、私からの押しに弱い彼にしては珍しく強情だった。
そのため、ここにくるまでずっと不安だった。
目の前の彼は、一見笑顔に見えるが、その表情はやや硬い。
2年も付き合ってきたから分かるその変化。
何か隠している時の表情。
隣の冬子も、いつもの「ゆるふわ100点満点」の笑顔ではなく、暗い表情。私のあたって欲しくない予想がチラチラと頭に浮かぶ。
ネット小説でみた事ある展開ではない事を祈る。
「うん、話があるんだ。その、話す前に言っておくんだけど、君は何も悪くない。僕が悪い。冬子さんも悪くない。ただ、僕が悪いんだ。だから怒らずに聞いてほしい」
彼がもったいぶった話し方をする。
私はイライラする。申し訳なそうにする冬子と彼。
私と彼らという構図。それが事実を表している。
「それで、話って何かな?」
「その・・・・・僕と別れてほしいんだ」
彼らを見た瞬間悟っていたこととは言え、心に大きな衝撃が走る。
「別れてほしい」「僕と・・・・」「別れてほしい」と、心の中で何度も彼の声がリピートされる。
「ごめんなさい」
冬子がかわいい顔を歪めながら謝る。
泣きそうな顔の冬子。
ますます庇護欲をそそる姿に私はイライラする。
まるで私が悪者のよう。
ただでさえ、数の上で2体1と不利なのに、かわいい冬子の姿でコールドゲーム。
この図を見て、「どちらが悪いでしょう?」と小学生にアンケートをとったら、大差で私の完敗だと思う。
「なんかこっちの人の方が悪そう」「悪人ずらしてる」「こっち人の方が綺麗」と、率直で身も蓋もない意見を貰えると思う。
私は平常心を取り戻し、分かりきったことを聞く。
「なぜ別れてほしいの?私が何かした?悪い所があったなら言って?私、直すから」
未練がましいセリフだけど、口から自然と言葉が出る。
私は彼の事が好きだ。
彼と冬子は互いに顔を見合う。
目で会話する二人。
それを見て私の心は悟った。
もう無理なんだと。
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