1話

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「それと、冬子の彼氏達呼んでおいたから。さすが冬子よね。悪気がなく、3人もの男性に好かれるんだから」 「え、え、なに、ちょっと」 さっきまでブルブルとかわいい小動物のように震えていた冬子は一転して、真顔で混乱する。さっきまでのは演技だったようだ。 その瞬間、2人の男が現れる。 確か一の友達。 1人の男は手作りと思われる看板を持ち、 「ドッキリ、大成功」 と叫ぶ。 もう一人は、ノートパソコンに繋いだWEBカメラでこちらを撮影している。 ちらりと見えたパソコンの画面には、ニヤニヤ動画の姿。 このファミレス店内の映像の上に、「どうなった?」「修羅場ktkr」のコメントとが流れている。どうやら生中継しているようだ。 看板を持っている男が笑顔で私たちを見る。 「ドッキリですよ。ドッキリ。そんな辛気臭い顔しなくても。ほら。婚約破棄は嘘ですよ。ほら笑顔、笑顔」 が、その場は凍りついたように静まり返っている。 関係者だけでなく、周りの客席の人たちも気まずい表情をしている。 私が辺りを見回すと、そっと目をそらす主婦の方々。 「あれ?ごめん、遠くから見ていてよく分からなかったけど、タイミング間違えた?」 看板男は私たちを見てキョロキョロする。 私は、内心混乱してた。 え?ドッキリなの。なにこれ。え?どうなってるの? 意味わからないんだけど! スーツ姿の男性(実は付き合うわけでもなく、もしもの場合に備えてついてきてもらった俳優志望の男友達)も、目が泳いでる。 「どうすればいいんだよ?」と私に目で話しかけてくる。 「しらないわよ!あんた俳優志望でしょ。なんとかしないさよ」と目で返す。 元彼、いやさっきのはドッキリだったから現彼氏の一は、絶望の表情。 しかも、え?、泣いてる。 目から涙を流している。 ちょっと止めてよ。 こんなとこで泣かないでよ。 私の友達?(今でも友達と思ってくれればいいんだけど)の冬子は、混乱の極みで、一目散にこの場を逃れるために上着を着、鞄の紐を肩にかける。 が、そこに現れる3人の男達。 「冬子、どうしたんだ?」 「そうだよ、冬子の友達に呼ばれて店の前で待ってて、さっきメールが来たから来たんだけど」 「おい、なんでお前たちが冬子って名前で呼んでるんだよ、俺は彼氏だぞ」 「は、何言って、彼氏は俺で」 「いや、俺が彼氏で」
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