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「俺は請負屋という所で働いている。何でも屋みたいな所だ。そこの雇い主に頼まれて来たから、詳しい事は知らない。ただ、事故にあったとしか……」
「事故……そんな、よりにもよって事故だなんて」
和江さんが口元を押さえた。
俺はリーに伝えられた一語一句をただ正確に言った。
「隣の県だそうだ。遺体の損傷が激しくて、なかなか身元が分からなかった。少しの手掛かりを元に何とか調べて、やっと木瀬柊也さんだと分かったと」
「それで……その遺体というのは」
「先方からの連絡待ちです」
その時コンコン、と障子の木枠をたたく音がした。
それに続き、障子が遠慮がちにそっと開けられ、八百屋の店主が顔を出した。
背も低くひょろひょろと軟弱そうな男だ。
「マサ、取り込み中すまない。そちらの方にお客さんだ」
店主は俺に目配せした。
「俺?」
続けて障子の向こうから入ってきたのは、千草だった。
「ショウ、連絡だ。山岡総合病院へ行け」
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