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指の先ほどの大きなビーズが、数珠繋ぎに紐に通されているものだった。
紐の先端は、ぶつりと千切れていた。
おそらくブレスレットか何かだったのだろう。
いかにも子供が作ったような、ポップな色合いのピンクや水色。
土や泥がついて、それは汚ならしくくすんでいた。
「確かに兄のものです……」
花澄は顔を伏せたまま、震える声で医師に伝えた。
損傷と腐敗が激しい遺体は見ない方がいいと医師は勧め、花澄も同意した。
「“彼”が搬送されてきた時、警察に届けを出したのですが、何せ条件が悪くて……。それでも何とかご家族の元にお返ししたいと、請負屋さんにお願いしたんです。
こんなに時間がかかってしまい、申し訳ありません」
医師は淡々と、しかしすまなさそうに言って頭を下げた。
そこから先はあっという間だった。
死亡診断書を受け取り、引き取りの手筈などを相談したあと、俺と千草は再び花澄を車に乗せ、帰途についた。
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