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「休憩時間の後、舞台にいたのはカリさんです。第二幕では主演は仮面を被っていたし、仮にそうでなくても元々お二人は姉妹で顔立ちも似ているのです。ですが、普段の印象は全く違いますね。それが牛飼い女のラーダー役では、目尻や鼻筋に濃い舞台化粧を施すことで、パールヴァティーさんがカリさんに似た顔になる化粧をするんです。舞踊は、元々お二人とも練習をしていたのでしょう。ただラーダー役に選ばれたのが妹さんだっただけです」
カリが眉を顰め、すかさず凪雲に反論する。
「私は、劇が終わった直後に象頭のマスクを被り、ガネーシャとしてシヴァの子守をしていました。その後、凪雲さん達に会ったのです」
凪雲は無表情で沈黙した後、ゆっくり否定した。
「それは違いますね。あの祭礼からの帰り道にシヴァさんと合流して、僕らと共に帰宅した象頭のガネーシャ役は、クリシュナさんです」
次男坊のクリシュナは飄々とした顔に戻り、凪雲の説明に耳を傾けている。雪也はいよいよ混乱しだした。何とか凪雲の言葉を理解しようとして、思考を巡らせる。まるでルーレットのようだ。
雪也は声を上げて確認しようとした。
「ええと、俺がパールヴァティーさんだと思っていたのがカリさんで。カリさんだと思っていたのがクリシュナさんだったって事か?」
いくら舞台化粧を施して別人のような雰囲気を纏っていたとはいえ、この姉妹を大勢の人間が見間違えるなどということがあるだろうか。雪也は、胡散臭そうに眉根を寄せる。しかし、あの舞台化粧自体がパールヴァティーの顔をカリに近づけるものであるというのは間違いないようだった。あの舞台におけるラーダーという役柄自体が、パールヴァティーから野の花のような可憐さを奪い、苛烈で気の強い女性の雰囲気にしていたのだから。
それに一幕と二幕で少し主演の雰囲気が変わったような気はしていた。なおかつパールヴァティーは、普段は村人にあまり顔を見せないという。
「つまり十三時三十分の時点で間違いなく祭礼の野外ステージの付近に居たのが、カリさんとクリシュナさんなのです。特にカリさんは十二時半から十三時半まで括弧たるアリバイがあります」
「という事は? どうなるんだ。まさか、パールヴァティーさんが犯人だっていうのか?」
雪也は凪雲に掴みかからんばかりになって詰問した。
「それは違います。雪也君、少しは自分でも考えて下さいよ」
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