プロローグ

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 一番最初にコーヒーカップの乗ったおぼんに手を掛けたのは、背の高い木戸日向(きど ひなた)だった。  数秒の差で草野風奈(くさの ふうな)の手が空を掠める。 「ふっ」  日向は勝ち誇ったような笑みを風奈に向けた。 「ふんっ!」  風奈は眉間に思いっきりしわを寄せ、憎々しげな目線でそれに応えた。 「ああ、草野くん、こっちを頼むよ」 「はあいっ!」  マスターに名指しで頼まれた風奈を、今度は一番年下の土屋恋歌(つちや れんか)が羨ましそうに眺める。  風奈は得意気に鼻をツンと上に向け、チーズトーストを運んでいった。
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