プロローグ

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――一週間前、日向はうっかり手を滑らせて、大皿を一枚落としてしまった。  ガッシャーンという派手な音がして、日向の足下には白いガラスの破片が散らばった。  コーヒーを淹れていたマスターは、慌てて日向のもとに駆けつけた。 『木戸くん!そこから動くな!!』  叱られる!  そう思った日向に、マスターはものすごい形相で言ったのだ。 『そこから一歩も動くなよ、木戸くん。僕がこの破片を片付けるから』 『そんな、悪いのはあたしです!あたしがやりますから!』 『駄目だ!もしも君の手や足に傷が付いてしまったらどうするんだ!』 ――「やば!中身もイケメン!」 「何歳くらいなんだろう?40?」 「40はいかないんじゃない?でも、若く見えるだけだったりして」 「あれで彼女いないとか、びっくりだよね」 「えっ!?いないんですか!?」  隣で二人の会話を流し聞きしていたもう一人のバイト仲間、土屋恋歌(つちや れんか)は驚きの声を上げた。
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