キンモクセイ

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スリッパの色で学年の区別が出来るうちの学校は、1年が緑、2年が青、3年がオレンジのスリッパを履いている。 そして彼女のスリッパの色は青。 つまり僕より一つ上の2年生、先輩だ。 利用者が少ないとはいえ、全く来ないというわけではない。 そう思った僕は彼女について何も思っていなかった。 けれど彼女は毎日放課後、決まって夕方5時に図書室に現れた。 「(教師の嘘つき)」 毎日やってくる彼女を、僕は最初煩わしく思っていた。 けれどそれが変わったのが彼女と出会って一ヶ月が経とうとしていたとき。 ある日彼女は図書室に来なかった。 あんなに毎日来ていたというのに、なぜ突然……。 「昨日、来てませんでしたね」 「えっ??」 翌日、いつものように“これお願いします”と言って返却する本を渡してきた彼女に、僕はつい声をかけてしまった。 「(あっ、ヤバい……)」 そう思ったときには時すでに遅し。 出てしまった言葉は今更取り返しは付かない。 向こうだって僕のことを顔馴染み程度には知っているだろうが、今まで業務的な会話以外をしたことなど無い男に、突然声をかけられたら引くだろう。 というより、正直声をかけた僕が会話を続かせられる自信が無い。
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