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けれど僕の心配などすぐに打ち砕かれる。
「昨日は熱で学校を休んでいたの」
「えっ、大丈夫なんですか??昨日の今日で体だるかったりしないんですか??」
「ふふっ、大丈夫。昔からこういうのたまにあるから慣れてるから。ありがとう」
そう言って彼女はそのままいつものように本を選ぶために奥へと行ってしまった。
拍子抜けするほどに短い会話。
確かに続かせられる自信など無いが、これはあまりに短すぎる。
というより、彼女のほうから打ち切ってきた。
「(僕が言うのも何だが、もう少し会話続かせる努力しろよ。そんなに本が大切か)」
“次はもっと会話続かせてやる”
この一件から、僕の中で勝手に、彼女への小さな勝負がスタートした。
最初はとりあえず挨拶に一言付け加えて話すことから始めた。
すると彼女も同じだけ話してくれるようになった。
正直嬉しかった。
「先輩の名前って、三好栞那(みよし かんな)で読み方合ってますか??」
「うん、合ってるよ」
「じゃあ、栞那先輩って呼んでもいいですか??」
勝負を始めるまでずっと気にしていなかった、貸出カードに書かれた彼女の名前。
勝負をきっかけに、いつか呼んでやろうと心に決めていた僕は、チャンスだと思ったとき、彼女に向けてそう尋ねた。
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