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ああそうか。
僕は彼女が……、栞那先輩が、好きなんだ。
そのことに気付いた瞬間、僕は自分の中で作っていた小さな勝負などどうでもよくなった。
そんな勝負じゃなく、もっとちゃんと話がしたい。
もっと栞那先輩のことを知りたい。
もっと栞那先輩に知ってもらいたい。
もっと、僕の名前を呼んでほしい。
それから僕は彼女にどうにかこの気持ちを受け入れてもらうため、毎日放課後、決められた時間で頑張った。
けれどその三ヶ月後、僕の想いは、突然現れた一人の男によって呆気なく散った。
「おい!!」
大きな音を立てドアを開けたと思えば、そのまま入口から中に向けて大声を出す。
見ると、そこには髪を茶色に染め、制服をだらしなく着ている男の姿。
あまりにもこの場所と不釣り合いな言動と見た目に、僕はため息を吐きそうになる。
しかし次の瞬間、男の口から出た言葉は……。
「栞那、帰るぞ!」
“栞那”??……。
今こいつは栞那先輩のことを呼んだのか??……。
そんなこと、考えなくてもわかる。
だって今ここにいるのは僕と栞那先輩しか……。
だとすると、こいつはいったい……。
「ごめん谷口君、すぐ行く!」
「ああ、外で待ってるからな」
栞那先輩の言葉に谷口という男は図書室から出た。
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