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でもこれは仕方ないだろ。
王座にいた時も皇帝としか言われてなかったし、誰も名前を呼んでいなかった。
これで名前なんか知れる訳ない。
あんたとしか呼べないだろ。
「ゲオルグ」
「え、げおるぐ?」
「俺の名前だ」
ああ、赤の皇帝の名前か。
ヤタガラスに名乗る名なんてない。とか言いそうなタイプなのに意外に律儀なんだな。
「ゲ、ゲオルグ・・・さん?」
「ぎこちなさすぎだ。ゲオルグでいい」
まさかの呼び捨て許可が下りた。
様を付けろとか言われると思っていたのに。
「じゃあ、ゲオルグ。他の皇帝たちの名前も知らないから教えて欲しい」
「・・・・」
「な、何だよ?」
他の皇帝の名前を聞いたらゲオルグの目つきが更に悪くなったような気がする。
「・・・名なんか直接本人から聞けばいいだろ」
「はぁ、それはそうだけど・・・」
「もう時間も遅ぇ、寝るぞ」
なんで機嫌が悪くなってるんだよ。
良い人なのか嫌な人なのか、いまいちわからない。
機嫌の悪いゲオルグは、部屋にある唯一のベットへと向かっていた。
「あの、寝るって?」
「そのままの意味だろ」
「どこで?」
「ベットで」
「どこの?」
「ここのだ」
「なんで!?」
「さっきからギャーギャー騒ぎすぎだ。何を驚いている?」
いやいやいやいや!逆に何で不思議がってんだよ。
普通に考えて皇帝のゲオルグと庶民な俺たちが相部屋すんのはおかしいだろ。
「自分の部屋あるだろ! そっちで寝ればいいのに何でここで寝るんだよ!?」
「お目付役の意味ねぇだろが。残念だな、証明が出来るまでは四六時中ずっと俺が居ることになる」
マジかよ・・・最悪だ。
せめて寝る時くらいゆっくりさせろよ。
まさか風呂も一緒じゃないだろうな?
返ってくる言葉が怖くて聞けねぇ。
「・・・じゃあ、シーツ1枚くれよ。俺たちはソファで寝るから」
ふかふかのベットで寝れると思ったのに、ちくしょう・・・。
まぁ、ソファもソファで俺とヤタくらいなら余裕で寝れるほど幅があるし良いか。
しかもいい布で出来ているし寝心地も悪くないだろう。
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